「ゴメンね、薙~!」

 遅れて駆け付けた遥は、ボクの顔を見るなり飛びついて来た。

「んもぉ~、むっちゃ心配したぁ!氷見から連絡受けてマッハで帰って来たのに、俺、全然間に合うてへんやん!ごめん、薙!本当~に、ごめん!」

 ──到着時から、ずっとこの調子である。

ボクを抱き締めたまま、一向に離してくれない。

「遥、もう大丈夫だから。怪我も無かったし。」

「それは結果論でしょ!? 肝心な時に傍にいない俺なんて、四天失格だよ!」

幾度宥ナダめても、自分を責め続ける遥。

明らかに度が過ぎるスキンシップに、周囲が引いている。滅茶苦茶に荒らされた会議場の和室では、屋敷仕えの護法が、忙しく片付け作業を続けていた。

 ──あの後。

ボク等は全員で、天魔の鏡を厳重に封印した。

本来は、首座が護摩供養(ゴマクヨウ)をして修めるべき處(トコ)ろだが、ボクには未だその修法(スホウ)が伝授されていない為、腕の立つ護法を何人か集めて、一斉に封縛術を施す事になったのである。

 お陰で、依代の封印は問題無く成満した。
魔鏡は《水の星》の預かりとなり、以後、姫宮家が細心の注意を払って管理してゆく事になる。