「他に何か質問は?」
ニッと笑って、おっちゃんは訊ねたが、頭の中が真っ白で、直ぐには質問が思いつかない。
暫く考えて──。
ボクは渇いた喉から、漸(ヨウヨ)う声を絞り出した。
「母さんは、この事を知っているの?」
「あぁ、まあ大体の處(トコ)ろは知っているんじゃねぇかなぁ?実際に『仕事場』を見た訳じゃねぇから、何をどうするかまでは解らんだろうが。」
「…そう…」
そうか──知っていたのか。
だから母さんは、本家に行くと言ったボクを、引き止めてくれなかったのだ。
全てを明らかにする為に…。
自分が措(オ)かれた立場を、正しく把握させる為に。
母さんは、敢えて笑顔でボクを送り出したのだ。
病弱な母さんの青白い顔が、脳裡を過る。
母さんは、極一般的な家庭で大切に育てられた一人娘だった。親父とは大学で知り合い、後に結婚したらしい。
喘息持ちで体の弱い母さんの為に、空気の綺麗な山麓の小さな村に居を構え、ひっそりと暮らした親父──。
そうして、ボクが生まれたのだ。
「知らなかった…。親父は、毎日往復四時間も掛けて、此処まで通っていたんだ…。」
「お前や、お前の母さんの体を気遣っての事だ。兄貴も、それを苦にする事はなかっただろうよ。あんまり気にすんな。」
「じゃあ…長期出張で帰って来なかったのは?」
「地方討伐に行っていたのさ。俺達の仕事は、長引く事が多いからな。正式に依頼があれば、何処にでも赴く。泊まり掛けなんて、しょっちゅうさ。別に浮気していた訳じゃあないぜ?そこんとこは、解ってやれよ??」
そう言って、おっちゃんは豪快に笑う。
ニッと笑って、おっちゃんは訊ねたが、頭の中が真っ白で、直ぐには質問が思いつかない。
暫く考えて──。
ボクは渇いた喉から、漸(ヨウヨ)う声を絞り出した。
「母さんは、この事を知っているの?」
「あぁ、まあ大体の處(トコ)ろは知っているんじゃねぇかなぁ?実際に『仕事場』を見た訳じゃねぇから、何をどうするかまでは解らんだろうが。」
「…そう…」
そうか──知っていたのか。
だから母さんは、本家に行くと言ったボクを、引き止めてくれなかったのだ。
全てを明らかにする為に…。
自分が措(オ)かれた立場を、正しく把握させる為に。
母さんは、敢えて笑顔でボクを送り出したのだ。
病弱な母さんの青白い顔が、脳裡を過る。
母さんは、極一般的な家庭で大切に育てられた一人娘だった。親父とは大学で知り合い、後に結婚したらしい。
喘息持ちで体の弱い母さんの為に、空気の綺麗な山麓の小さな村に居を構え、ひっそりと暮らした親父──。
そうして、ボクが生まれたのだ。
「知らなかった…。親父は、毎日往復四時間も掛けて、此処まで通っていたんだ…。」
「お前や、お前の母さんの体を気遣っての事だ。兄貴も、それを苦にする事はなかっただろうよ。あんまり気にすんな。」
「じゃあ…長期出張で帰って来なかったのは?」
「地方討伐に行っていたのさ。俺達の仕事は、長引く事が多いからな。正式に依頼があれば、何処にでも赴く。泊まり掛けなんて、しょっちゅうさ。別に浮気していた訳じゃあないぜ?そこんとこは、解ってやれよ??」
そう言って、おっちゃんは豪快に笑う。