『エリート中のエリート』…か、だが。

「いくら優れた行者であっても、闇に堕ちた者に救いは無い。」

「仰有る通りです。仏に帰依し、加護を賜わる我等六星一座に、外法の僧が敵う筈がない。でも…」

「でも?」

「鈴掛一門については、気になる事が多々あるのです。」

 そう言うと──。
蒼摩は考えを纏める様に、目を伏せた。

暫しの沈黙の後。
やおら思い詰めた表情で顔を上げ…

「曾て、この屋敷のすぐ近くに『くちなわ神社』という小さな社があったのですが…首座さまは、ご存知でしたか?」

くちなわ神社?
くちなわ──朽ち縄??
『くちなわ』とは確か、『蛇』の別称だ。

 蛇…。
薬子の依代も、鏡の中の蛇だった。
何だろう、この奇妙な符合は?
何やら嫌な予感がする。

「あ…いや、ゴメン。初耳だ。この辺の地理には、未だ疎くて…。」

 少し戸惑いながら答えると、蒼摩は束の間、表情を和らげた。

「でしょうね。いいんです。」

 そう言って微笑むと、一慶を振り仰ぐ。

「先生はご存知でしょう?…鷹取さんも。」

いきなり話を振られて、一慶は、鷹取とチラと顔を見合わせてから言った。

「…くちなわ神社は、《鈴掛一門》に縁りの社だった。もう無くなってしまったがな。」

「無くなった!?…何故??」
「さあな。」

そう言う彼の表情は、益々厳しくなっている。
それは鷹取も同じだった。