「鷹取さん、他の天魔は、現在どういう状況なの?依代の所在や、封印の確認は取れている??」

「いえ…それが…」

 鷹取が、難しい顔で語を濁す。

「今現在、依代の保管先が確認されているのは、この藤原薬子を含めて、僅か三体に過ぎません…。他の天魔は、未だ奉り先すら確認が取れていないというのが現状です。」

「確認出来たのは、誰と誰?」

「先ず、太宰府天満宮に奉られてある菅原道真公の依代です。太宰府には先日、六星の《封縛師》が出向いて、更に硬く封印し直しました。あそこは昔から信仰の篤い土地柄で、奉り方も丁寧です。道真公も神格を得ておりますので、この先も天魔に戻るとは考えられません。」

 …確かに。

菅原道真公は『学問の神様』として、古くから信仰の対象にされている。そのお陰で、他の天魔より神格化が進んでいるのかも知れない。

「ところで、首座さま?残る一体なんですがね。」

鷹取の言葉を、神崎右京が引き継いだ。

「もう一体は、細川ガラシャでした。依代は、既に蔡場家が回収し、新しい器に遷(ウツ)し換えております。より強固な封印を施しておりますし、手厚く祀(マツ)っておりますから大丈夫ですよ。」

 右京は明るい笑みを見せて、ボクを安心させてくれた。

蔡場家に──。それなら安全だ。
取り扱いにも、全く問題は無いだろう。

 篝が当主を務める蔡場家は、《封縛師》と呼ばれる一族である。代々、封印や霊縛を得意としているのだ。これ以上、安全な保管場所は無い。