第六天魔・織田信長の《依代》は、もう随分以前に失われている。前回、信長公が封印されたのは二百年以上も昔の事らしい。

 当時の神子は、死闘の末、天魔の頭領である信長公を、種子島にある神木に封印した…と《六星天河抄》には記されている。

 それから、依代は二度入れ換えられた。
最後に《封印》が修繕されたのは、明治時代の中頃である。

 ところが…。
それから間も無く、日露戦争が起こった。
そうして立て続けに、二度の世界大戦が勃発する。

 六星一座も、当然その範疇にあった。

武運長久、護国繁栄の為に、祈念三昧の日々を強いられる中、首座や各家の当主だけは徴兵を免れる事は出来たが…天魔の依代を護り切る事までは、叶わなかったのである。

 そうして戦中の混乱に乗じて、多くの依代が失われてしまった。

取り分け厄介なのは、第六天魔である。
最も凶悪で、最も恐ろしいこの禍星(マガツボシ)の行方を、一座は長い間探し続けていた。

 だが…六星行者の天眼通(テンゲンツウ)を以(モッ)てしても、信長の所在は杳(ヨウ)として知れない。

現在どんな形状で、何処に封印されているのかも判っていないという状況だった。