「…それで、どうだった?薬子から、何か有力な情報は得られたか??」

 一慶が、不意に話題を振って来た。

「口を割らせようとして、素手で天魔を握り潰すくらいだ。それ相応の収穫があったんだろうな?」

 …耳が痛い。
執拗に当て付けてくる一慶に、ボクは、しどろもどろで答えた。

「…え、と…それが…あんまり。」

「あんまり?一人で勝手に突っ走った挙げ句、収穫無しか!?」

「め、面目ない…。」

ボクは、これ以上無い程小さくなって俯いた。己が不甲斐なさを思えば、恥ずかしくて顔が上げられない。

 危険を承知で大見得切った手前、これといった成果が挙げられなかったのは、我ながら不覚の極みだ。

 独り消沈していると…蒼摩が、ヒョイとボクの顔を覗き込んだ。

「…首座さまは、薬子から何を聞き出したかったのですか?」

「信長の所在を…。」
「信長公の?」

 言葉尻を捕らえた鷹取が、眉を吊り上げ聞き返す。

「その為に、御自ら危険を犯して?」
「はい…。先走って、ごめんなさい。」

 素直に頭を下げると、鷹取は恐縮した様に苦笑した。

「まぁ、確かに…。天魔の頭領である織田信長公の所在確認は、我々の第一命題です。今現在も、全く行方が解らないという状態ですからね。」

「うん。まだ封印が効いているかどうかも判らないし。どんな形状なのかも未確認だと聞いていたからね。薬子なら…或いは、何か知っているんじゃないかと思ったんだけれど。」

 でも、結果は惨敗だった。

天魔でありながら、薬子が信長の居所を知らないとは驚きだが、こうなると事態は深刻だ。

 手掛かりも無いのに、一体ボク等は何処を探索すれば良いのだろうか?漠然と捜索の手を広げたところで、ヒットする確率は極僅かだ。

 だが、事態は急を要する。

ボクが──神子が、この世に誕生したという事は、何処かで第六天魔も覚醒しているかも知れないのだ。

一刻も早く、所在を明らかにしなければ。

 悶々と考えに沈んでいるボクを見遣ると、一慶は大きく溜め息を吐いた。

「まぁ、そう落ち込むなよ。気持ちは解らないでもないが…こればかりは、お前一人でどうにかなる問題じゃないんだ。何しろ、数百年も昔に封印された天魔だからな。」

 ポンポンと、あやす様に頭を叩かれて…ボクは只、小さく頷くしかなかった。