「…それで?薬子に何の用なんだ?」

険しい顔で、一慶が訊ねた。

「奴らの、《主》の…こと、訊きたい…」
「主──織田信長か。」
「止め…ないでね、一慶。」

 ボクが釘を刺すと、一慶は半ば呆れた様に嘆息した。

「止めた處ろで聞きゃあしねぇだろう??」
「あは…よく、ご存知で。」

「こんな時に冗談はよせ。とにかく深追いはするな。ヤバイと思ったら、直ぐに手を引け…良いな?」

 その言葉に無言で頷くと、ボクはゆっくり上体を起こした。然り気無く、ボクの背中を支えた一慶の手が、とても優しく温かい。

それだけで、少し体が楽になった気がした。

 さあ、もう時間が無い。
静かに呼吸を整えて…ボクは、自分の胸に手を当てた。そうして、ゆっくりと自分の『中』に指先を挿し入れる。

 刹那。鈍い痛みが胸を刺した。

「……ん…!」

堪えていたのに、思わず声が漏れる。
想像していた以上に、『痛い』。
自分でやってみるまで、解らなかった。

一慶や祐介が、一体どんな気分で《分霊術》の練習台になってくれていたのか…やっと理解出来た。

 これは、ちょっとした拷問だ。
それに…其処は彼となく、厭らしい…。