「それにな。行者の一族ってのは、甲本家の他にも、あと五つあるんだ。」

「まだ他にも在るの?!」

「あぁ。天皇直属の寺に属する行者一族は、甲本家を含めて六つの流れがあってな。《六星一座》と呼ばれているのさ。」

「六星一座…?」

《六星》とは、

金、火、水、土、風、木──の六つの属性を表す言葉だ。

それを行者の一族は、星と呼んでいる。

各家ともに司る《星》があり、その能力は《星》の性質そのものを表していた。

金の星は、和(ワ)。

火の星は、滅(メツ)。

水の星は、淨(ジョウ)。

風の星は、巡(ジュン)。

土の星は、還(カン)。

木の星は、封(フウ)。

──詳しい意味は分からない。

けれど、表記される文字を見る限り、どうやら霊に対する『対処法』や『扱い方』を表していると思われた。

《六星一座》は怨霊や魔を伏せる際、対峙するモノの『霊性』に合わせて、より効果的な属性を組み合わせたチームを編成する。

効率的に魔を伏せるには、星の属性を上手く組み合わせる事が重要なのだとか…。

 その為、一座には、古くからの協力体制が出来上がっていた。

我が甲本家は、《金の星》を司る家系であると同時に、《六星一座》の総元締でもあるらしい。

その当主は首座と呼ばれ、一座の長を務めている。首座が指示を与えて初めて、六星行者が『正しく』機能するのだ。

 成程…少し解ってきた。

ボクの身に振り掛かっている相続問題とは、恐らくこの《六星一座》に関する事なのだ。おっちゃんが『ただの跡取りとは違う』と言っていたのは、そういう事だったのか…。

甲本家の当主になるという事は、つまり、一座の首座になるという意味なのだ。