蒼摩は、静かに天魔を見据えた。

「貴女の正体が判りました。」
「──何と申した?」

「実体が無いままなのは、貴女の本体が、呪具に封じられている所為(セイ)ですね?それを探すのに少々手間が掛かりましたが…。多分、僕は見付けたと思います。」

 これを聞いた天魔は、初めて青褪め引き攣った。形勢逆転の流れに、焦りと戸惑いを隠せない。

蒼摩は人形の様な微笑を浮かべると、上着のポケットから、小さな丸い《鏡》を取り出して見せた。

「貴女の本体は、これでしょう?藤原薬子殿?」

「おのれ、小童!何処でそれを!?」

「そうですね…確かに、とても意外な場所に奉られてありました。貴女自身、ご自分の封印が解け掛かっている事に気付いたのは、ごく最近の事ではありませんでしたか?…そう、八年ほど前に。」

「何故それを──??」

 動揺した天魔は、迂濶にも、拘束の手を弛めた。ボクにとっては、又と無いチャンスだ。機を過たず、即座に反撃に出る。

 首に掛かる腕を振り解き、クルリと半身を反して鳩尾(ミゾオチ)に当て身を喰らわすと、『篝』は、呆気無く意識を失った。