紫が毅然と言い放つと、天魔の双眸が、スウッと眇められた。

「──それは良い。今この場でそなたを殺めれば、嘸や主様もお慶びになろう。」

 篝の体を借りた天魔は、不気味な笑みを浮かべて嘲った。

「…いや。いっその事、この場で行者共を根絶やしにするも一興じゃ。目障りな六星を殲滅《 (センメツ)せしめるは、我等が悲願。妾とて、敵を伐つに吝(ヤブサ)かでない。」

 …そう云うと。

奇怪に顔を歪めて、ボクを振り向いた。
唐突に延べた手で、首を絞め上げて来る。

「──く!」

息苦しさに身をよじると、天魔は嗜虐的な笑みを浮かべて、ボクの首に爪を突き立てた。

「…っ……あぁっ!」
「薙!」
「動くな、北天!!」

天魔の一喝で、一慶は足を止めた。

「動けば、そちらの主の命は無い。大事な神子を縊(クビ)り殺されたいか?」

 捕えられたボクを前に、皆が膠着(コウジャク)状態に陥った。それを見た天魔が、愉快そうに嘲笑(アザワラ)う。

「ほほほ…!よう躾けられた飼い犬共じゃこと。暫く、そうしていて貰おうか?」

 天魔は、篝の指で刀印を結んだ。

その指先で、一人一人を狙う様に、ゆっくりと突き付けてゆく。空気が、一際重く張り詰めた。