「五大尊咒、奏上!」

庸一郎の合図で、五人の行者が一斉に明王の真言を唱える。

 次々に発現する、破邪の力。
全員の法力が交錯し、まるで縄を綯(ナ)う様に、キリキリと寄り合わさっていく。

肉眼では、決して捉える事の出来ない光景に、すっかり心を奪われていると、突如、耳を裂く様な大音響が轟いた。

 バチ、バチバチッ!
バリバリバリ───!!

充分に凝縮した五人分の法力が、その臨界点に達する。

次の瞬間。
全員が声を併せて叫んでいた。

「「「悪鬼退散!」」」

ギャアアアアァ──!

 間髪措かずに、恐ろしい悲鳴が上がった。真っ白な光の刃が、羅刹の体を突き抜ける。

凄い。これが、明王の威神力!
まるで、幾筋もの雷撃を一箇所に集めた様だ。

 ──見れば。
羅刹は退(ノ)け反ったまま、その場に悶絶していた。五大明王の威力を一度に浴びたせいで、体の一部が吹き飛んでいる。

「よっしゃっ!」

烈火は、思わず拳を振り上げた。

「今のは綺麗に入ったな。これで決まりだろう!チョロいもんじゃねぇか!!」

 会心の一撃に大はしゃぎの烈火。だが…
闘いは、これで終わりではなかった。