翳した刀印で縦横に空を斬ると、玲一の魂魄がフワリと緩んだ。

──今だ!

狐の耳を掴む感じをイメージし、《分霊》の要領で一気に引っ張る。

 ズルズルッ、クシャッ!

不気味な音と共に、血色に染まった肉塊が、畳の上に落ちた。

 これは…玲一の体の『一部』だろうか?
実体なのか、霊体なのか…金目で視ると判別が着かない。

完全に《狐霊》が同化している。
少なくとも。ボクの目には、『狐の頭』にしか視えなかった。

「これが羅刹かぁ?? やけに小せぇな。」

烈火が、興味深そうに身を乗り出して呟いた。

 引き抜かれた狐霊の頭部を良く見ると、首の下に、人型の黒い『塊』が張り付いている。

周囲に、何とも云えぬ悪臭が立ち込めた。

「…ぅえっ!酷でぇな、こりゃ。」

 不快に顔を背ける烈火。
確かに酷い匂いだ。胸が悪くなる。