「庸一郎さん、ここ視える?」

 ボクは、傍らに控えていた庸一郎に、傷口を示して見せた。

姫宮庸一郎は特別に『目』が利く。
羅刹を霊視するには、最も適任だ。

「あぁ…視えます、首座さま。ここが奴の侵入口ですね。」

「中の様子は?」

「奴は、まだ狐に獅噛み付いています。霊縛は効いていますが、保(モ)って四~五分というところでしょう。」

…凄い。
やはり、現役の行者は違う。
判断が早くて助かる。

 ボクは、決断した。

「霊縛が効いている間に、羅刹を引っ張り出そう。ちょっと乱暴だけど、狐ごと一気に引き剥がす。しっかり抑えて。」

「解った。」

 烈火と一慶が、玲一の両肩を保定する。
右京は頭を、鷹取は足を押さえ付けた。
…まるで磔にされた様な玲一の姿。
緊張感が辺りを包む。

 ボクは魂魄の侵入口に指を挿し込み、中でプカプカ浮いている《狐霊》の耳を掴んだ。もう一方の手で透かさず刀印を結び、九字を切る。

「臨兵闘者、皆陣列在前!」