そうして。
おっちゃんは、ゆっくりと順を追って話し始めた。一族の事──そして、親父の事を。

 今は亡きボクの親父・甲本伸之は、この家の当主だった。

当主だなんて何やら大仰な感じがするが、つまりは跡取りという意味なのだろう。親父は長男なのだから、それは当前だと思うのだが…

「それが、ちょ~っと違うんだなぁ。」

 おっちゃんは意味深に首を振って言った。

「違うの?当主って、その家の『長』って意味だよね??」

「ま、普通はそうなんだがな。ウチの場合、もっと責任が重いんだ。甲本家の跡を継ぐって事は、他にも『特別』な意味がある。」

「…特別?」

「あぁ、家業の関係でな。ウチの当主には昔から、矢鱈と決め事や柵(シガラミ)が多い。だから厄介なのさ。」

「…ふぅん…」

何だか大変そうじゃないか。

『当主』という、少し古風な言い回しには、何か重要な意味があるようだ。

わざわざそう呼び表さなくてはならない、極めて『特別』な理由が───

 おっちゃんは云う。

「一族一族って言うが、事は俺ら一族の問題だけでは済まないんだよ。跡取りに立つ人間の力量に依っては、かなりややこしい事になる。」

「??どういう意味?」

「それを今から説明してやる。驚かないで聞けよ?」

おっちゃんは、不意に真顔になった。