この世代は、鍵爺や宗吉翁を始め、強力な降伏系の行者が多いのが特徴だ。その所為(セイ)か…皆、隠居したとは思えない程、元気が良い。

 中でも、神崎宗吉は別格だ。
現役の六星と比べても、全く衰えを感じさせない。

 年齢の割には確(シッカ)りとした足取りで、宗吉翁はボクに近付いてきた。皺だらけの口元に小波(サザナミ)の様な笑みを湛えて、訊ねる。

「首座さんは、羅刹を倒すおつもりか?」
「はい。」

「羅刹は、鬼や。狐ほど利口やない。力は強いがアホやさかい、なかなか此方の思う様にはならん。アホの相手は難儀でっせ?降伏すんのも力づくや。アホなりに…ま、ちと厄介やな。」

「ありがとう、宗吉じいちゃん。だからこそ、今ここで倒して措(オ)きたいんだ。狐祓いに、トラブルは付き物だと、一慶から聞いて知っています。複数の霊が憑いて、収拾が着かない事も侭(ママ)あると…。だが幸い此処には、一座の精鋭が集まっている。これだけ腕利きの行者が一同に介する機会は、そう無い筈だ。皆さんが、お知恵とお力を貸して下されば、羅刹を倒すのも不可能じゃないと、ボクは思っています。」

 そう言うと、宗吉翁はニヤリと笑った。

「ええ判断や。儂(ワシ)も手をお貸ししましょ。」

「いいの?」