鷹取は、沈痛な面持ちで押し黙ってしまった。誰も、何も語ろうとしない。

沈滞ムードの中。
一慶が急かす様に、ボクを振り返った。

「どうする、薙?もう時間が無い。このままじゃ玲一さんの魂魄まで、羅刹に喰わるぞ。」

「解っている。天魔も、それを狙っているんだろう。ボクの金目もタイムリミットが迫っている。仕切り直して、この場でケリを付けるよ。」

「だろうな。…祐介を呼んで来る。」

一慶は、踵を返して部屋を出て行った。

 そこへ──。
不意に《風の星》の筆頭総代が口を挟む。

「首座さんや。ケリを付けると仰有(オッシャ)るが…如何に貴女様が神子やいうても、相手は羅刹や。そう簡単には参りまへんで?」

 …神崎宗吉。
長身白髪のこの老人は、現当主・神崎右京の実父だ。

今日は、鍵爺の名代(ミョウダイ)として同席していたが…冒頭で簡単な挨拶を交わした後は、一切の発言を控え『傍観者』に徹していた。

齢八十を越しているにも関わらず、実に矍鑠(カクシャク)としている。

 それもその筈。

彼は先々代──つまり、ボクの祖父の代に活躍した、往年のエースなのだ。