どうしよう、どうすれば良い??
こんな時、実戦経験の無いボクは、狼狽えるばかりだ。

そこへ──

「ノウマクサマンダ・バザラダン・カン!」

 凜と澄んだ声が不動明王の真言を唱え、一瞬で玲一の動きを止めた。篝が、指を内側に絡めて、内縛印(ナイバクイン)を結んでいる。

 呆気に取られるボクを尻目に、篝は空かさず印を組み換えた。──と、次の瞬間。

「オン、キリキリ!」

陀羅尼の威力が発動し、玲一の頭がガクリと垂れた。張り詰めた空気が一度に緩み、一慶は大きな嘆息を洩らす。

「やっと止まったか…有難うな、篝。」

「いえ。御安い御用です。」

 ほんのり頬を染める篝を、ボクは感心して振り返った。

「凄いね、篝。驚いたよ。」

「霊縛は得意なんです。私、お役に立てましたか?」

「勿論だよ。もう少しだけ、そのまま抑えていてくれる?」

「はい。」

 コクリと頷くと、篝は静かに合掌した。

「ノウマクサマンダ・バザラダン・センタン・マカロシャダヤ、ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン。」

詠じる真言が、子守唄の様に聞こえる。
──刹那。

「オン・キリキリ!」

突然、強い霊圧に縛されて、玲一は気を失ってしまった。