「ぅわあぁぁっあぁ!!」

狂った様に暴れ出す《黄泉の番人》。
一慶が、それを後ろから羽交い締めにする。

「どうした、玲さん!?落ち着け!」

 だが、彼の制止の声は届かない。
玲一は苦悶に顔を歪めて、頻(シキ)りに足をばたつかせている。

激しく体を掻き毟る動作を繰り返したかと思うと、今度は、自分で自分の首を絞めようともがいた。

「やめろ!…駄目だって、玲さん!!」

 懸命に抑え付けようとする一慶。

だが。それを払い除ける玲一の腕に、彼の手は何度も弾かれた。これを見た右京と鷹取らが、一斉に飛び出し来て、玲一を組み敷く。

 《土の星》の当主は、三人掛かりで拘束された。それでもまだ、抵抗を続けている。体の自由を奪われた事に激怒し、遂には、獣の様な咆哮を上げた。

「玲一!やめろ!!」
「一体どうしたと言うんだ、急に!?」

 騒然とする会議場内。
烈火が、動揺も露わにボクを振り返る。

「何だよ、一体!?どうなってんだ??」

 ボクにも解らない。
何だ、この反応は…?

狐なら、今の加持で充分、降伏出来た筈だ。
それだけ渾身の力を込めたし、効いているという手応えもあった──なのに。

この異常行動は…??

「これは、狐霊の仕業なんかじゃない!別の『何か』が憑依したんだ。」

 出し抜けに、紫が言い放つ。
途端に、大きなどよめきが起きた。