喩(タト)えそれが大罪を犯した受刑者であったとしても、命は命だ。決して許される事ではない。

 改めてその数を口にする事で、本人もそれを思い知った様だ。向坂真織の贖罪は、今この瞬間から始まったのである。

「真織。お前が奪った命の数だけ、衆生を救済しなさい。それまでは、決して死んではならない。生きてこの世に贖罪の足跡を残すんだ。それが、お前を生かす『理由』だ。」

「はい。」

「お前は、既にボクの塊儡だ。主の命令無くして動けぬ身だ。塊儡には、塊儡の分がある。以後、任務を遂行する際は、その名を隠し、決して表舞台に立つな。お前が行者として動く時、ボクはお前を『鴉(ヌエ)』と呼ぶ。」

「鴉…。」

「神子の招来には、何を於(オイ)ても参ずべし。償いの行を積ませてやろう。」

 真織が深く礼拝するのを見届けてから、ボクは一同を見回した。

「命の誓願は成立した。この場に集う者全てが証人だ。これより、この件に関する議論の一切を禁ずる。異義は認めない!」