命を生かす為に、命を捧げる…。

一見矛盾する二つの理念を、分霊に因(ヨ)って実現するのが《塊儡術》であり…故に秘法とされているのである。

 ボクは、真織との間に幾つもの誓約を結んだ。なのに、それでも未だ完璧ではない。

一番大事な『命』の約束を取り付けなければ、この儀式は成満(ジョウマン)しないのだ。

「顔を上げて…真織。」
「はい。」

 静かに顔を上げると、真織はボクの金目を覗き込んだ。その顔には、明らかな畏れの色が浮かんでいる。

従う者と、従わせる者…。
ボクらの間には、もうそんな関係が出来上がっていた。

「ひとつ訊ねたい。」
「何なりと。」
「何人殺した?」

真織の眉が、ピクリと動いた。
残酷な質問を、ボクはもう一度繰り返す。

「受刑者の命を、お前は幾つ奪った?」
「それは─…」

 自ら犯したの罪の重さに、真織はギュッと目を瞑る。

容赦の無い言葉…。
彼にとっても、胸を抉られる様な問いだろう。

だが、ボクは首座だ。
一時の感傷で彼の命を救ったのではない。

これは、《呪殺》という大罪を償わせる為の措置なのである。彼にも皆にも、それを知らしめなくてはならない…。

 短い沈黙の後。
真織は、ゆっくり目を開け答えた。

「奪った命は五人分。他に…八人の受刑者を、廃人にしました。」

五人と──八人?
そんなに??