「汝が命は、吾が命。汝が力は、わが力。その力と魂魄とを捧げ、生涯違がえず吾に仕えよ。」

「はい。神子さまの御心のままに。」

　真織は、合掌したまま深く頭を垂れた。

　誓約の儀式は続く。
欲しいものは、唯一つ。
ボクに対する絶対帰依と、その証だ。
だから、相応の答えを得るまで、ボクは彼に命じなければならない。

「向坂真織。汝、己が魂に賭けて、吾に絶対の帰依を誓うべし。吾が戒律に従いて、仏尊《ぶっそん》に報いよ！」

「御心のままに。」

深々と頭(ｺｳﾍﾞ)を垂れる彼に向かって、ボクは矢次早に命を下す。

「以後、吾が許し無くして、狐を使役してはならない。」

「はい。」

「吾が許し無くして、行者を辞めてはならない。」

「はい。」

「吾が許し無くして、自ら命を絶ってはならない。」

「はい。」

「そして如何なる時も、決して人を殺めてはならない。」

「はい。この身、今生(ｺﾝｼﾞｮｳ)に果つるまで、神子さまの命(ﾒｲ)に従います。」

　真織が答える度に、ボクの中の彼の魂魄が、生命力に満ちていく。

《塊儡術》の真髄は、この誓願にこそあるのだと、《六星天河抄》は語っている。分霊された魂は、神子に絶対帰依を誓う事で、命の糧を得るのだ。