長跪合掌(ちょうきがつしょう)とは…

仏に教えを乞う為に、乱れた袈裟を正して、合掌を捧げる事を云う。仏陀への帰依(ｷｴ)を表す、最高礼だ。

　ボクは真織に、それを命じた。

傀儡(ｸｸﾞﾂ)として、彼を遵(ｼﾀｶﾞ)えるには、神子に対する最高の礼儀を以て、絶対帰依(ｾﾞｯﾀｲｷｴ)を誓わせなければならない。

　これはまだ、序の口だ。
儀式の、ほんの触りに過ぎない。

真織もそれを覚悟してか、重い体に鞭打つ様に立ち上がった。

震える手で合掌すると、右膝を着き、左膝を着き…深々と頭を下げて、額を畳に擦り付ける。

　そして。開いた両手を、掌を上にして耳の横に置き──下から掬い上げる様に、頭上まで掲げて平伏した。

　…これは、五体投地(ｺﾞﾀｲﾄｳﾁ)の礼だ。
仏に絶対帰依を捧げる、拝礼作法である。

　真織は、同じ動作を三度繰り返した。
よろめきながら平伏する彼の頭上に、ボクは静かに手を置き訊ねる。

「汝(ﾅﾝｼﾞ)が主は、誰か？」
「甲本薙さまで御座います。」

「その旨、相違ないか？」
「はい。御座いません。」
「ならば、誓いを立てよ。」

　空気がピンと張り詰めた。
『未知なる力』に突き動かされる様に、ボクは真織に命じる。