ボクは、真織に向き直った。
慰霊が終わったばかりの祐介に、状況を訊(キ)く。

「真織の状態は?」

「魂魄に軽い炎症が見られるけれど、癒霊(イレイ)が効いたから問題は無いよ。キミは?」

「平気。紫に治して貰った。」
「そう…。人手不足だし、助かるね。」

 場にそぐわない軽口を交わしながらも、ボクは現状を確認する。

──大丈夫。問題無い。
全てが順調に進んでいる。
この先も…きっと巧くいく筈だ。
落ち着け。落ち着け。落ち着け…

「これより盟約の儀を執(ト)り行う!」

 大きく深呼吸すると、ボクは高らかに宣言した。一慶と烈火が静かに脇に下がる。後には、疲れた様に身を投げ出している真織だけが残った。

「向坂真織。」

 ボクに名を呼ばれて…真織は、ピクンと身を震わせる。

「金の神子が、これより汝と命の誓いを交わす。起き上がって礼拝(ライハイ)せよ。」

いつになく強い語調で命ずれば、真織は大儀そうに青醒めた顔を上げた。

「聞こえたか、真織──!? 直(タダ)ちに長跪合掌(チョウギカッショウ)して、吾が前に直れ!」

 怒声を浴びせられて、真織は『はい』と弱々しく返事をした。必死の形相で身を起し、居住まいを正す。