ボクは、深く息を吸い込んだ。

分霊──行者の魂を半分に分けて、神子の魂に同化させる秘術。 この『魂を半分に分けるという作業』が、実は一番難しい。

 金目の神子にだけ許された、禁断の大法ではあるのだが、必ずしも成功するとは限らない。

無理に剥ぎ取れば、精神まで引き裂かれる。

『成功率は良くて七割』だと、一慶も言っていた。

 ボクは真織の《魂魄》を傷付けない様、慎重に彼の胸に手を差し入れた…。

人の目には、真織の胸に、軽く左手を当てているだけの様に見えただろう──だが違う。

ボクの手は今、彼の肉体を通り抜け、その魂に直接触れていた。その感覚を掴むのに、随分苦労したのだが、修練の成果は確実に現れていた。

 いける──!

思っていたより状態は悪かったが、今ならまだ間に合う。このまま…優しく進めよう。

 初めて触れた真織の魂魄は、恐ろしく繊細で柔らかだった。指先が当たるだけで、ホロホロと形を崩す。ボクは、より一層慎重な動作で、彼の魂魄を手の中に包み込んだ。

 温かい…脈打つ命の温もりが、しんしんと伝わって来る。生きている魂は、どうしてこんなにも温かいのだろう?

形など、有るようで無いものなのに…。