「…どうか差別や偏見に捉われないで欲しい。真織が異端なら、《金目》を持つボクも異端者です。《狐憑き》は排除され、《神子》ならば許されるという選(ヨ)り分けは不自然だ。生類全てに仏性があるのなら、皆が平等でなくてはならない。なのに、持って生まれた能力を否定されながら生き続けるなんて…あまりにも不公平だ。この不毛な輪廻を、ボクは自分の代で終わりにしたいんだ…!」

 伝えたい事を、ボクは全て語り終えた。
だが、異論も反論も同意の声も挙がらない。少し消沈していると──

「首座さま。」

目の前に鷹取が進み出て、深々と頭を下げた。

「貴女の御心は…良く解りました。」

 驚いた事に、鷹取は泣いていた。
厳つい顔に涙が一筋二筋流れていて…ボクは、掛ける言葉を失ってしまった。

「…貴方は…本当に、伸之に良く似ておられる…。面影だけでなく、性格や考え方までも、全て…生き写しです。」

 込み上げる嗚咽を堪えながら、鷹取は云う。

「首座さま…貴女の為さる事に異を唱える者は、もう此処には居りません。」

 彼はボクの中に、亡き親父の姿を見ている様だった。