ボクが、甲本伸之の一人娘だから──。

死線を共に闘って来た盟友の忘れ形見だからこそ、心底案じてくれている。鷹取は、命を賭けてもボクを守るつもりなのだ。

 厳格さ故に保守に流されるのも、神子に万が一の危険が及ばぬ為のもの。無謀を窘(タシナメ)る強い言葉すら、忠心からの苦言なのだ。

…だけど。

「鷹取さん。ボクが、この術を施す事は、今後の一座の在り方を左右する決断になると思う。」

「…ですが…」

「聞いて。貴方には、ボクの考えをちゃんと理解して頂きたい。だから、最後まで聞いて下さい。」

「………っ」

 鷹取はグッと語を飲み込んだ。
皆も、静かに次の言葉を待っている。

 ボクは深呼吸をしてから、続けた。

「六星行者は、長い歳月の中で独自性に流され、いつしか『特異な環境』を造り上げてしまった…。生粋の六星である貴方がたは、その異常性にお気付きだろうか?」

 千年に渡って脈々と伝えられ、積み上げられて来た一座の歴史と誇り──それを。

『異常』と表現した事で、会議場は殺伐とした空気を帯びた。

 ささくれ立った視線が注がれる中…。
ボクは、尚も臆せず話を繋げる。