「ボクなら、『生きている間』に、この世で罪を償なわせます。一般人が法律に寄って裁かれ、刑罰を受けるのと同じ様に。行者である我々一座もまた、この世の罪は、この世で贖(アガナ)わなければならない。それが人の筋道だ。《廃行者》にする事で、本来受けるべき『罰』を、先伸ばしにはさせない。」

「………。」

 鷹取は反論しなかった。
何も云わず、ただジッとボクを見詰めている。

 そうだ。
情状酌量の余地が無いなら、より優れた解決策を打ち出して、流れを変えるしかないのだ。

人の『情』には動かない鷹取も、仏の『道』に添う方法なら、きっと賛成してくれる筈だ。

 …だがその為には、鷹取の上を行く説得力と、誰もが納得する具体案を、皆に提示する必要がある。

「鷹取さん。」

 ボクは、真っ直ぐに彼の目を見た。

「仏は、いかなる悪人罪人であろうとも、髪の毛一筋の仏性があれば救済の手を延べる…そうですよね?」

 ボクの問い掛けに、鷹取は驚いた様に目を見開いた。

「闡提成仏(センダイジョウブツ)の理(コトワリ)ですか。」

「そうです。それから、こんなのもありますよね?『生きとし生ける者、皆全て、生まれながらに《仏性》を持つ』…。」