「ふぅん?」

 祐介は、疑わし気な目でボクを見る。
冷や汗を掻きながら必死で嘯くボクは、蛇に睨まれた蛙だ。

 引き攣(ツ)り笑いを返しながら、昨夜の一慶の言葉を反芻する。

『…良いか?テンの存在は、他言無用だ。その時が来るまで、絶対に誰にも言うな。祐介にも烈火にも…篝にもだ。身内から情報が漏れたら、面倒だからな』

 ──ボクは、こういうシチュエーションが何より苦手だ。そもそも隠し事が出来ない性分なのだ。

問い詰められても、咄嗟に上手い言い訳が思い浮かばないし、惚ける事も誤魔化す事も出来ない。分かち合った『秘密』が、胸に重くのし掛かってきて…もう、息も出来ない。

 明らかに挙動不審なボクを見て、祐介は不機嫌そうに半目を眇めた。

「解り易い人だね、キミは。まぁ、良い。今回は、キミの下手くそな嘘に騙されてあげるよ。」

「鎌を掛けたの!?」
「まぁね。嫉妬もあるけれど。」
「嫉妬?なんで??」

 ボクが訝ると、祐介は疲れた様に額を押さえて嘆息した。

「本当に、何処まで鈍感なんだ…」

 彼がボソリと呟くのを、ボクは聞き逃さなかった…。