名前──名前、か。
ボクは、ペットを飼った経験が無い。
名付け親になるのは初めてだ。
…うんと良い名を付けてあげなくちゃ。

「じゃあね、白貂だからテンちゃん。」

これぞと思った名前を呼ぶと、白貂は嬉しそうに、ピィと一鳴きした。

 可愛い。ピョンと跳ねて、ボクの肩に飛び乗り、そのまま頭によじ登って来る。

重さは全く感じなかった。
体が透けて、まるでホログラムの様に見える。

 不思議な子…だけど。
ボク等は直ぐに仲良しになった。
それを見た一慶が呆れた様に嘆息する。

「白貂だからテンって…見たまんまだろうが。何だ、その短絡的を絵にした様なヤバいネーミングセンスは??」

「でも気に入ったみたいだよ?」

 テンは、ボクの肩と頭をチョロチョロと行き来している。とても興奮している様だ。

「…まぁ、いいけど。」

耳の後ろを人差し指の先でカリカリと掻きながら、一慶は言う。

「なかなか良いものを拾ったよ、お前。丁度良い。明日の《裁定会》に、コイツを連れて行こう。」

「テンを?どうして??」

「《狐憑き》と仲好くなる為に、一役買ってくれそうだからな。」

 一体どういう意味だろう?
テンが役に立つ??

一慶は、相変わらず意味深長な笑いを湛えている。きっと何か良い考えがあるのだ…。

 ボクは、黙って次の言葉を待った。
一慶は、咥えた煙草に火を点けると、紫煙を燻らせながら続ける。

「《白貂》の眷属には、特徴的な使い道があるんだ。今から、コイツの扱い方を教えてやるよ。上手くいけば、どんでん返しが期待出来るかも知れない。明日の裁定、面白くなりそうだな。」