──こうして。
ボクの《金目》は、無事に開眼(カイゲン)した。

だが。感激の余韻を味わう暇も無く、一慶は、容赦無い指示を飛ばして来る。

「よし。次は、即座に金目に成れるよう、一連の動作を繰り返し行う。先ずは、術の解除からだ。」

キッパリ言い放つや、彼の顔が『鬼教官』に変わる。

それから…鬼教官の指導の元、ボクは、金目になったり、元に戻したりするという修練を、黙々と繰り返した。

 とは云え。一度感覚を掴むと、それからの上達は早く…とうとう明け方には、金目を自在にコントロール出来るまでになっていた。

当初の宣言通り、一慶は本当に、朝までボクを寝かせてくれなかった。

 一夜明けて──。

「…薙……薙?」

優しい声で名前を呼ばれて、ボクは、ゆるゆると意識を取り戻した。

 あれ──?

いつの間に眠り込んだのだろう?
気が付けば、私室のリビング・スペースで、ブランケットに包(クル)まっている。

 …そう云えば。
明け方、部屋に戻った記憶はある。
だが、その後の行動が解らない。

この様子では、どうやら布団に辿り着く前に、力尽きたようだ…。このブランケットは、紫が掛けてくれたのだろうか?

 彼と同じ香りがしている。
それがとても心地好くて、また少し眠くなる…