「そうかな?逆に、どんどん遠ざかっている様な気がするんだけど…。」

 再び自信を失い掛けてた矢先に言われた、この言葉は…寧ろボクを、曖昧な気持ちにさせた。近付いているのか、遠ざかっているのか、自分ではもう判断が着かない。

 黙り込んだボクを見て、一慶は、ふわりと微笑んだ。

「ほら、見てみろよ。」

 そう言って、シャツの胸ポケットから、銀に輝くジッポーを取り出す。

「なに?」
「映っているだろう?…お前の目が。」

 ボクの目──?

彼に言われた通り、手渡されたジッポーに、自分の目を映して見る。鏡面仕上げの銀のボディには、半分透き通って僅かに金色を帯びた、ボクの瞳が映っていた。

「金目に…なり掛けてる…。」

「あぁ。なかなか良い仕上がりだ。この調子で今夜一晩、続けてみないか?勿論、紫を寝かし付けた後でな。」

「付き合ってくれるの?」

「乗り掛かった船だ。この際、とことん付き合ってやる。その代わり…」

「その代わり?」

「今夜は朝まで寝かさないからな。覚悟しとけよ?」

「…それ…セクハラだよ、一慶…。」

 ボクは、力無く切り返した。