日曜日だと云うのに、屋敷の中は異様に静かだった。

護法も家政婦さん達も、一体何処に行ってしまったんだろう?西の対は、人っ子一人見当たらない。

 苺は、何故か実家へ戻ってしまったし…いつの間にか、烈火の姿も消えている。

遥は鍵爺の元へ泊まり込んでいて、今日も帰らないそうだ。祐介も、昨夜から引き続き病院に詰めている。つまり、今この屋敷に居るのは、ボクと一慶と紫の三人だけだ。

 火が消えた様に寂しくなった邸内…。

「喧しいのが居なくて、丁度良いじゃないか。」

そう言って一慶は、笑うけれど──。

「一慶は良いの?何か予定は?」

「別に何も。今日は丸一日、お前に付き合ってやれるよ。」

「そっか…ありがとう。」

 良かった…。
何故か、心底安心している自分がいる。
紫は、まだ本堂に籠っている様だった。

昼食を用意してくれた氷見に依れば…彼の澄んだ読経の声は、早朝四時から延々と続いているらしい。

 一慶は、云う。

「この様子じゃ、紫と顔を会わせるのは夜になるだろうな。」

 夜まで…。
そんなにも長い時間、紫は祈り続けるのか。
まだ食事を摂った形跡も無いのに。