「金目じゃなければ活現しない?じゃあ…この術も?」

「どれだ?」
「えーと…」

パラパラとページを捲ると、すぐに、栞を挟んだ箇所が現れた。

「ここ!《霊縛術之二》ってやつ。」

 ボクがページの一文を差し示すと、一慶は本を手に取り、素早く視線を走らせた。読み進める内に、段々表情が険しくなる。

「お前…これ…。」
「この方法なら、真織を救えるよね?」
「確かにそうだろうけど…でもな。」

「つまり、ボクがこれを修得すれば、もう《異能》の行者が苦しまなくて済む…そういう事でしょ?」

「そうだけど、ちょっと待て!」

 急に、頭をグイッと抱え込まれた。

──どうしたのだろう?
見上げた一慶の表情は硬くて、ボクの提案を手放しで喜んでいる様には見えない。

「お前…ちゃんと読んだのか、コレ?」
「?読んだけど??」

 キョトンとしていたら、一慶は呆れた様に嘆息した。

「いいか、薙?これは確かに、即効性のある術だ。だがその為には、お前自身が、金目を自在に使い熟(コナ)す必要がある。それも、この二日程の間にだ。…この意味が解って、言っているんだろうな?」

「解っているつもりだけど…。」

「金目になるだけでも、心身共に、かなりのリスクが伴うんだぞ?」

「でも、この方法が一番、皆を納得させられると思うんだけど。」

「そりゃ、そうだけど…お前、どうやって、この術を身に付けるつもりだよ?」

 どうやって?
そんなの、決まっているじゃないか。

「一慶が教えてくれるんでしょ?」

「でしょ?って…こんな時だけ、可愛い顔するな!卑怯だぞ、お前は!!」

 ???何が卑怯なのだろう?
ただ、首を傾けただけではないか。

一慶の云うことは、時々意味が解らない。