「そっか…。ごめんね、ベッドまで占領しちゃって。起こしてくれれば良かったのに。」

「何度か起こした。」
「え、嘘っ!?」

「嘘なもんか。お前、本に突っ伏して爆睡していたじゃねぇかよ。クーカクーカと気っ持ち良さそうに寝やがって。仕方が無かったんだよ、転がしとく訳にもいかないしな。」

 ──そう言うと。
一慶は不吉な笑みを含んで、ボクを見た。

「…なに?」
「別に。ただ…」
「ただ?」
「お前、寝顔は可愛いよな。」
「え!?」

「俺の為すがままにされているお前というのも、なかなか悪く無いシチュエーションだった。」

「なっ!?何かしたの??」

「勿論、美味しく頂いちゃったに決まっているだろう?据え膳喰わぬは何とやらってね。」

「武士は喰わねど高楊枝っていうのもあるよ!ねぇ、嘘でしょう?いつもの冗談だよね!? 聞き流して良いんだよね??」

「…必死だな。」

「当たり前だ!乙女の貞操が賭かっているんだぞ!?」

「乙女?何処にそんなものが??」
「───。」

「…嘘だよ。いつもの冗談だ。この俺が、焼き饅頭風情を相手にすると思うか?常識で考えろよ。」

 またしてもからかわれた、悔しい。