病院前に横付けされたメタルブラックのランドクルーザーに乗り込み、ボクらは一路、甲本の本家へ向かった。車内は、何やら異様な雰囲気である。

 見たところ、一慶はアウトドアの趣味でもあるようだ。

小さなスコップにランタン…登山靴にシュラフ。片方しかない汚れた軍手、束ねたザイル。──他にも、何に使うのか用途不明な沢山の用品類が、トランクルームに雑多に置かれている。

土くれが床のアチコチに落ちていて、『白い服が汚れる!』と、苺は文句タラタラである。一慶は、赤信号の度に舌打ちするし…何やら物凄く居心地が悪い。

 そうして、これといった会話が無いまま、車は次々と複雑な街角を曲がった。

息が詰まりそうな車内…。
雰囲気が悪い所為か、乗り物酔いしそうになる。

大体、何故ボクが助手席に乗らなければならないのか?まだ、それほど親しくなってもいないのに…

こういう場合、普通は面識のある者同志──つまり苺が、助手席に座るのが自然の流れじゃないのか?

 なのに苺は、ボクの荷物を持って、サッサと後部座席に潜り込んでしまった。見たところ、彼女のふわふわドレスと大袈裟なバッグだけで、シートの半分を占領している。そこへ更にボクの荷物が置かれたので、乗車スペースは、いっぱいだった。

 ──こうなると、必然的にボクが助手席に座るしかない。わざわざ迎えに来て貰ってなんだが…これでは逆に迷惑だ。

一慶はずっとピリピリしているし、苺とは全く話が噛み合わないし…どうにも落ち着かない。こんな事なら、一人で行った方がマシだった。

とにかく、気まずくてかなわない。