「ねぇ、コレなんて読むの?」
「一切悉有仏性(イッサイシツウブッショウ)だ。」
「どういう意味?」

「一切の生類は、皆生まれながらにして、悉(コトゴト)く仏性を有す──」

「つまり、どういう事?」

 首を傾げるボクを見て、彼は、更に噛み砕いた解釈をしてくれた。

「…要するに。どんな人間も皆、生まれながらに『仏』となれるだけの徳の芽を持っている──そういう事だ。」

 成程、成程。
そう言われると、実に解り易い。

「じゃあ、これは?」

「怨親平等(オンシンビョウドウ)。正しい者も邪な者も、全てを平等に救うという、仏の極大慈悲(ゴクダイジヒ)を表している。」

「ふぅん。じゃあ、この符箋の一文は?」
「お前ね。そんなに一気に詰め込んで」

「知りたいんだよ!教えて貰わないと解らない。ねぇ、どういう意味なの?早く教えて。」

「……。」

 一慶は、盛大に溜め息を吐いた──が。
やがて、諦めた様に肩を竦めて、ボクの手元を覗き込んだ。