「裁定会の事か?」
「解るの?」
「お前は、考えが顔に出易いからな。」

…ふん。悪かったな、単純で。

拗ねるボクを尻目に、一慶はフッと紫煙を吐き出して言った。

「その裁定会だけど。日程と参加者が決まったらしいぞ。」

「え…もう?」

「あぁ。今しがた、親父から連絡があった。お前には、明日の朝一で知らせるつもりだったんだけどな。」

おっちゃんから?
そう云えば、最近自宅に居る事が多い。
嫡子審議会以来、全然顔を逢わせていないから、細かい打合せも出来ていなかった。相談したい事が山程あるのに…。 

「親父は、プライベートで取り込み中なんだよ。悪いな、肝心な時に居てやれなくて。」

 見透かした様に、一慶が答える。
この人は時々ズバリと、ボクの気持ちを言い当てるから怖い。

『天解は苦手だ』なんて言っている割には、此方の心理を全て見通している様だ。妙に勘が良くて、時に困ってしまう。

「それで…裁定は、いつ?」
「四日後だ。」

四日後。
思っていたより、余裕が無い。
向坂家の本審問が明後日だから…丁度、その翌日だ。

「誰が集まるの?」

「各家の当主と筆頭総代。後は、俺とお前と祐介だな。」

「全部で十五人くらい、かな?」

「いや。《裁定者》は十二人だ。俺と祐介は、当時の事件担当者として証言するだけだし、玲一さんは『裁かれる側』だ。」

 裁かれる側──。

そんな色分けをしなきゃならないなんて…とても嫌な感じだ。

 押し黙ってしまったボクを見て、一慶が不意に顔を覗き込んできた。

「どうした?」
「いや…早いなと思って…。」

「別に早くはない。寧ろ、やっと漕ぎ着けたって感じだがな。」

「そうなの?」

 ボクが訝ると、一慶は、慎重に言葉を選んで語り始めた…。