「立て、真織。親族の好しみで、拘束だけは勘弁してやる。」

 有無を言わさぬ口振りに、真織はユラリと立ち上がる。

「洗いざらい話して貰うぞ。お前には、山程訊きたい事があるんだ。」

「…あぁ。逃げも隠れもしないよ。」

 短い会話だった。
「連れて行け」と隆臣が命じると、真織はあっという間に取り囲まれる。

強引に両腕を捕まれ連行される彼を見て、ボクは堪らず、身を乗り出した。

「真織!」

 彼は──肩越しに振り向いて微笑んだ。

暫しの間、切な気な眼差しを向けていたが…やがて、小さく会釈をして、真織は男達と共に部屋を後にした。

「真織はどうなるの?」

 咳き込む様に訊ねるボクに、隆臣は抑揚の無い声で答える。

「彼の身柄は、本家預かりとなります。」
「それから…どうなるの?」

「今夜、一族で審問に掛けます。その後…早ければ明日にでも、警察庁警備局に身柄を引き渡されます。」

「警察庁!?」

「はい。表沙汰にはされていませんが、真織は『受刑者連続不審死』の重要参考人に挙げられています。奴には、カルトの疑いが掛けられているのです。呪殺は法で裁けませんが、警察の対面を保つ為にも、事情聴取は受けなければなりません。」

「だけど…真織はカルトじゃない。」