蒼摩が畳み掛けると、紫は訝しげに双眸を眇めた。

「…誰だっけ?見たことがあるね。」

「《水の星》の姫宮蒼摩です。覚えていらっしゃいませんか?」

「君、蒼摩くん? 嘘…いつの間にか大きくなってる…どうして??」

 紫は、頻りと首を傾げていた。
無理もない。彼の時間は、六年前から止まったままなのだから…。

 それを考慮してか、蒼摩は慎重に言葉を選んで説明をした。

「最後に紫さんに会ってから、もう六年も経っています。僕は、十六歳になりました。」

「蒼摩くんが十六歳?じゃあ僕は何歳??」

「紫さんは今、十九歳です。首座さま──いえ、薙さんと同い歳ですよ。」

 気を利かせた蒼摩が、然り気無くボクを指し示した。紫の透き通る瞳が、再びボクを見詰める。

どうしよう。
何か言わなきゃ…何か…。

 話の切っ掛けを探している間に、紫が、ふらりと立ち上がった。何処と無く覚束ない足取りで、ゆっくりと此方へやって来る。

一歩…また一歩。

 紫の行動に、皆が注視した。
真織は呆然とそれを見上げ──蒼摩と一慶は静観の構えで、成り行きを見守っている。

 目の前に立った紫は、眼を凝らす様にしてボクを見た。

「なぎ?」
「…うん、そうだよ。」