それは…ほんの一瞬の出来事だった。

ボクが放った霊光は、まるで超新星爆発の様に、忽ち部屋中に遡及する。そうして…見る間に燃え尽き、消滅してしまった。

 代わりに押し寄せて来たものは、泥の様な倦怠感である。四肢から力が抜け…眼の奥が鈍く痛んだ。

一体何がどうなったのか、皆目見当が付かない。そこへ──

「金目の…神子…!」

 真織が感嘆の声を挙げたので、ボクは自身の変化を知った。

あぁ、また金目になってしまったのか。
だけど…そんな事さえ、今はどうでも良くなっていた。

体がダルくて、ふわふわする。
何やら綿菓子にでもなった気分だ。

 暫し、飽和状態で立ち尽くしていると、一慶がやって来て、ボクの頭をクシャリと混ぜた。

「やったな。初めてにしちゃ上出来だ。」

 誉められた…。
つまり、ボクの降伏は成功したのか?
まるで実感が無い。

身体中に開放の余韻が残っていて、狂おしい程だ。

 朦朧とするボクを一瞥すると、一慶はジーンズのポケットに両手を挿し込んで、真織を振り返った。

「アンタの狐は全て消えた。さて、次はどうする?? 稲綱でも出してみるか?」

「……。」