「馬鹿!! 目、閉じんな!開けてろ!!!」

 一慶に、後ろから小突かれる。

「痛っ!何するんだよ、いきなり!?」
「煩い、前見ろ!」

言われて、恐る恐る前を見る。
すると、ボクの顔面すれすれの位置に、大口を開けた管狐が浮かんでいた。

 どうしたのだろう?
まるで、凍り付いた様に動かない。

──見れば。
他の管狐達も、時を止めた様に、空中で静止していた。

「霊縛か。一慶くんは反応が速いね。」

 抑揚の無い声で呟く、真織。
この現象を引き起こしたのは、一慶なのか?
いつの間に──!? 傍に居たのに、全く気が付かなかった。

 茫然と立ち尽くしていると、蒼摩が然り気無くボクの前に立った。刀印を結んで、徐ろに《九字》を切り始める。

「臨、兵、闘……」

 それを見た一慶が、直ぐ様ボクに指示を出した。

「蒼摩が、暫く時間を稼いでくれる。今の内に、紫を膝から下ろせ。」

「あ、うん…。」

 ぐっすり眠り込んだ紫を、起こさない様に…ボクは、彼の頭を優しく膝から下ろした。

立ち上がると直ぐに、一慶の指導が始まる。

「いいか?先ずは印を結ぶんだ。」