緊迫した空気が肌を刺す。
突然の野狐の襲撃に、ボクは、驚いて何も出来なかった。
一方──。野狐をあっさり片付けてしまった一慶はと言えば、此方も、真織に負けじと余裕綽々の表情を浮かべている。
「…凄い…。」
無意識に、賛嘆の言葉が洩れた。
そうとう場数を踏んでいるに違いない。
これが、行者の闘いなのだ──すると。
「お前もやってみるか?」
「…え!?」
一慶が、思いも掛けない事を『提案』して来たので、ボクは面喰らった。不敵な提案者は、何をか企む様な顔でボクを眺めている。
「丁度良い。実地で教えてやるから、狐の祓い方くらい覚えとけ。」
「え…えぇっ?嘘でしょう、無理!」
「お前は神子だろう?無理な訳あるかよ。触りだけだが、調伏の修法を教えてやる。…記別でな。」
「きべつ?」
「記別ってのは要するに、修行の前借りだ。後でちゃんと借りを返せよ?」
えぇっそんな──??
借りを返すって、どうやって!?
だが問い質す暇も無く、次の攻撃が始まった。
真織が印を組んで、召還の文言を唱えている。それを見た一慶は、狼狽(ウロタ)えるボクの傍らに立ち、小声で話し掛けてきた。
「来るぞ──管狐(クダギツネ)だ。」
突然の野狐の襲撃に、ボクは、驚いて何も出来なかった。
一方──。野狐をあっさり片付けてしまった一慶はと言えば、此方も、真織に負けじと余裕綽々の表情を浮かべている。
「…凄い…。」
無意識に、賛嘆の言葉が洩れた。
そうとう場数を踏んでいるに違いない。
これが、行者の闘いなのだ──すると。
「お前もやってみるか?」
「…え!?」
一慶が、思いも掛けない事を『提案』して来たので、ボクは面喰らった。不敵な提案者は、何をか企む様な顔でボクを眺めている。
「丁度良い。実地で教えてやるから、狐の祓い方くらい覚えとけ。」
「え…えぇっ?嘘でしょう、無理!」
「お前は神子だろう?無理な訳あるかよ。触りだけだが、調伏の修法を教えてやる。…記別でな。」
「きべつ?」
「記別ってのは要するに、修行の前借りだ。後でちゃんと借りを返せよ?」
えぇっそんな──??
借りを返すって、どうやって!?
だが問い質す暇も無く、次の攻撃が始まった。
真織が印を組んで、召還の文言を唱えている。それを見た一慶は、狼狽(ウロタ)えるボクの傍らに立ち、小声で話し掛けてきた。
「来るぞ──管狐(クダギツネ)だ。」