瞳に宿る徒ならぬ気配。

また──だ。
またしても、真織の人格が変わった。
五体から噴き出す凄まじい鬼気に圧倒される。

 この時。ボクは身を以て実感していた。
《狐霊遣い》が、如何に危うく脆く、恐ろしい存在であるのかを──。

 衣擦れの音が近付いて来て…ボクは、本能的に身構えた。

「貴女もですか?」

端正な真織の顔が、醜怪に歪む。

「貴女も、私を拒むのですね?」

「拒む──?違う、違うよ。ボクは、真織を拒んだ訳じゃ…」

「皆そうだった。私を忌避し、恐れ蔑み…近付こうともしなかった。私が《狐憑き》だからか?私が、人を害するとでも言うのか!?」

 俄かに興奮して声を荒げる真織。
いけない…正気を失い掛けている。

「私は、ずっとそうして虐げられてきたのです。皆が私を忌み嫌った。《狐憑き》の『嘘吐き少年』は、母親を狂わせ、弟までも殺すつもりだ…と!」