真織は、ゆっくりと顔を巡らせてボクを見た。

「子が親を思う事が、それ程罪深い事なのでしょうか?実の親子でなければ…それは、愛情とは言えないのですか??」

「真織…。」

 親が子を思い、子が親を思う…。
その事自体が、罪に問われる筈など無い。
だけど──

「それでも貴方は、間違っている。本当に千里さんを思っていたなら、こんな風に、犯した罪ごと彼女を匿ってはいけなかった。況(マ)してや、母親の罪を被って《呪殺》を続けるなど…絶対にしちゃいけなかった!」

 ボクは、彼の行為を真っ向から否定した。

喩(タト)え、法では裁けなくても…《呪殺》は、れっきとした殺人だ。理由はどうであれ、決して赦されるものではない。人として、間違っている。

「では、どうすれば良かったのです!?」

 突然、真織の声色が変わった。
地の底から湧き出す様な、殺気と苛立ちを帯びた声に、びくりと肩が跳ね上がる。

「高潔な首座さま──貴女の仰有る事は正論であって、正解ではない。だって…考えてもご覧なさい?母を闇行者に変えてしまった原因は、この私なのですよ!? 母の罪を白日の元に晒して措いて、自分だけが世間で、のうのうと暮らせる筈がない!」

 声高に叫ぶと…。
真織は、一歩また一歩と近付いて来た。