「…まだ嘘を吐くのか。どこまでも往生際の悪い人だな。あんなに雑で残忍な殺り方が、真織さんの仕事である筈がない。そろそろ吐いたらどうだ?言えよ、誰を庇っている!?」

「千里さん、ですよね?」

 蒼摩が横から口を挟んだ。

「《共鳴者》だった千里さんは、自分でも知らぬ間に《闇行者》となって、裏で呪殺を繰り返していた。それを隠す為に、貴方は離れに彼女を匿まったんです。」

 蒼摩の言葉を、一慶が引き継ぐ。

「ところが──紫が、千里さんの後を追って《黄泉比良坂》を登って来るとは、流石のアンタも計算外だった。それで、辻妻合わせの『お家騒動』をでっち上げ、二人が離れに引き篭る理由をこじ付けたんだ。そうして、千里さんに掛けられた容疑を肩代わりした…そうだろう?」

 眉根を寄り合わせる一慶。
そこには、仲間を糾弾する者の苦悩と憤りが、複雑に入り雑じっていた。

「千里さんに向けられた嫌疑を、自分に向けさせる為に…アンタは、千里さんの手口をそっくり真似て、死刑囚を呪殺して回った。いかにも《闇行者》が健在で、未だ暗躍しているかの様に見せ掛けてな。」

「全て、お見通しですか…やれやれ。上手く誤魔化せたと思っていたのですがね。」

 自虐的に笑う真織。
それは、一番聞きたくない言葉だった。

これが全て真実なら、予想していた中でも最悪の結果となる。

「首座さま。」