《黄泉軍》は、八臂(ハチビ)を交互に繰り出して、次々に亡者達を鷲掴んでいた。

車輪の様にブンブン振り回される腕。
鎌の様な鉤爪に乱暴に掴まれて、亡者の体がグシャリと潰れる。

そうして一度バラバラになった骨は、門の向こう側に到達した途端、ザワザワと寄り集まって再び亡者の姿に戻った。

 凄まじい光景だ。
あの腕に掴まれたら、生身のボク等も、唯では済まないだろう。

少し怖かったが──。
真織の指示に従って、ボク等はタイミング良く《黄泉の門》を抜ける事が出来た。

 …門柱の横を通り抜ける一瞬。

《黄泉軍》の長い腕がブン!と勢い良く振り降ろされ、ボクの体の直ぐ脇を掠めた。

真織がクイと引き寄せてくれたので、巧く躱わす事が出来たけれど…流石に、冷や汗は禁じ得なかった。

 彼等の腕は、あまり器用でないらしい。
一度振り降ろすと、次のストロークに入る迄に、やや時間が掛かる。

だから、八本もあるのだろうか?

擦れ違い様に見た黄泉軍は、『何か』を仕留め損ねた…という事が判ったのか、醜怪な顔を巡らせて、キョロキョロと辺りを見回していた。