挑発的な真織の誘いに、二人は、そっと視線を交わす。

束の間、無言で意志を確認し合うと…蒼摩がスイと寄って来てボクの耳元に囁いた。

「首座さま。」
「なに?」

「身体守護の祈念を施します。少しの間、じっとしていて下さいますか?」

 訳も分からないまま、彼に言われた通りにすると…蒼摩の細い指が、サッと印を結んだ。

両の中指と薬指を伸ばして突き合わせ、残りの指を内側に折る。

そして──

「オン、ヤマラジャ、ウグラビリャ、アガッシャ、ソワカ」

 蒼摩が真言を唱えた途端、身体の内奥にピリリと痺れる感覚があった。

「──っ!」

 思わず、胸を抑えて俯く。

「痛みましたか?」
「…いや、大丈夫。」

 痛くはない。

ほんの少し、射し込む様な感じがあっただけだ。でも、それは一瞬の出来事で…今はもう何も感じない。

 これを見ていた真織が、クスリと不敵に笑った。

「閻魔天咒(エンマテンジュ)かい、蒼摩くん?」

「はい。真織さんが護りに附いて下さるのなら、こんなものは必要無いと思いましたが…念の為。」

 蒼摩が慇懃(インギン)に答えると──

「信用されていない様だね、私は。」

「お気に障ったのなら謝ります。こう見えて、心配性なものですから。」

 澄ました顔をして切り返す蒼摩。
真織を前にしても、全く臆する風が無い。

稀代の狐霊遣い相手に、対等にものが言えるなんて…その気位の高さは賞賛に値する。