一体…何が始まるんだろう?
怖い。急に胸がドキドキしてきた。
緊張のあまり顔を強張らせるボクの前で、彼は静かに目を閉じる。

 そうして細い左手を骨片に翳し、小さな声で何事か唱え始めた。

 …不思議な言葉だった。
お寺で聞くお経とは、全然違う。
耳に響いてくる音調は独特で、何処か哀切を帯びていた。

これは──外国語?
まるで子守歌の様にも聞こえる。

 詠う様に、囁く様に。
不思議な異国の言葉を唱える祐介。
凄い集中力だ。空気がキンと研ぎ澄まされて、息も吐(ツ)けない。

 神聖な気に圧倒されていた、その時。
突如、彼の指先に蒼い光が灯った。

小指、薬指、中指…人差し指に親指。
点々と灯った光の粒が、見る間に大きくなって、瞬く間に、ひとつの光の玉になる。

 ボクは、思わず息を飲んだ。
なんて綺麗な蒼い光…
発光ダイオードの様に、熱の無い澄んだ蒼だ。
細い指の先に灯ったそれは、揺めきながら辺りを強く照らしている。

 美しい…。
まるで、指先に星を集めた様だ。
何処までも輝きを増す光の玉に、いつしかボクは、釘付けになっていた。