玲一は、拍子抜けする程豪快に、一慶の無礼を笑い飛ばした。

「まぁ、せっかく来たんだ。そんなつれない事を言うなよ。お前に渡したい物もあるしな。」

「渡したい物ねぇ…。」
「つまらない物なんだが。」
「つまらない物なら要らねぇわ。」
「一慶ってば──!」

 ボクは思わず声を上げた。
流石に、それは無いだろう!?
親しき仲にも礼儀有りの諺もある。

「折角のご厚意を…失礼だよ!」

 ボクは、一慶の袖を引っ張って窘めた。
すると彼は──

「何だよ。じゃあ、お前が貰うか?」
「…え?」

 そこへ。
玲一が、満面の笑顔で口を挟んだ。

「あぁ、いやいや。首座さまへの贈り物は、只今制作中なのです。後日改めて、お屋敷に送らせて頂きますよ。」

「…はぁ…それは、どうもご丁寧に。わざわざ有難うございます…」

 ボクは曖昧に頭を提げた。
だが──制作中とは、一体何を??

頻りに首を傾げていると、玲一は飾り棚から小さな桐箱を取り出した。それを、勿体付けた仕草で恭々しく一慶の前に置く。

「開けてみろ。」

 不気味な程、全開の笑顔だった。
一慶は、うんざりと嘆息しつつ蓋を開ける──が。

途端に「うっ」と呻いて固まってしまった。
頬の片側だけが、ヒクヒクと小刻みに痙攣している。