他愛ない話をしながら山門を抜けると、壮麗にして重厚な大伽藍(ガラン)が、威容を誇る様にボクらを迎えてくれた。

 …なんて立派な寺だろう。
凛と澄んだ空気に、我知らず圧倒される。

「首座さま。」

茫然自失の体(テイ)で立ち尽くすボクの肩を、蒼摩が遠慮がちに叩いた。

「庫裏(クリ)は此方ですよ。」
「くり?」

「僧侶の住まいや台所を、庫裏(クリ)… 又は僧坊と呼ぶんです。」

 蒼摩が指差す方には、現代的な白い家屋が見えている。本堂とは、長い渡り廊下で繋がっているのだが──

「なん…と言うか。お寺の雰囲気と合っていない、よね。」

「最近、建て替えたみたいですよ。こちらも羽振りが良い様で。結構な事ですね。」

蒼摩は辛辣に言い放った。

 そうこうしている間に、ボク等は玄関前に辿り着いた。ドアホンを鳴らすと、直ぐに一人の家政婦が応対に出る。

「ようこそいらっしゃいませ。本日は、良く御越し下さいました。奥で旦那様が御待ちです。どうぞ、此方へ。」

 丸い背中をいっそう丸めながら、小太りの家政婦が深々と頭を下げた。恐縮しながら框(’カマチ)を上がると、家政婦は興味津々の眼差しでチラチラとボクを盗み見る。